EC運用を成功させるためには、売上アップの施策や広告の運用、マーケティング戦略などが重要ですが、それと同じくらい大切なのが法律遵守です。その中でも「景品表示法」は、とくにEC運用担当者にとって密接に関わってくる法律の1つです。
この法律は、消費者が誤解をしないように適切な情報を提供するための規制を設けており、違反すると企業イメージを損ねるだけでなく、高額な罰金や措置命令が科されることもあります。とくに、不当表示や景品類に関連する違反は、法律の理解が不足していると、気づかないうちに違反してしまうこともあります。
本記事では、景品表示法の基本的な内容から、EC担当者が注意すべき具体的なポイント、2023年に行われた最新の法改正について詳しく解説します。法律を守りつつ、健全な運用を実現するための参考にしてください。
1.景品表示法とは?
・景品表示法とは
景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、消費者に対して誤解を与えるような表示や過剰な景品を防止することを目的とした法律です。EC運用においては、商品の説明や価格表示、キャンペーンの告知などがすべてこの法律の規制対象となります。この法律を正しく理解していないと、消費者に信頼されるサイト運用を行うことができません。
2. 違反した場合の罰則は?
・措置命令や課徴金が科せられる
景品表示法に違反した場合、まず企業が受ける可能性があるのが「措置命令」です。これは、公正取引委員会や消費者庁が不当表示や過剰な景品提供を確認した際に、違反行為の是正を命じるものであり、速やかな対応が求められます。
さらに、悪質な場合には「課徴金」が科されることもあります。これは、違反によって得た利益に対して一定の金額を支払う義務が生じるもので、企業にとっては大きな損失となります。
・差止請求を受ける場合も
さらに、消費者や競合企業が違反行為によって被害を受けたと感じた場合、「差止請求」を行うことができます。これは、違反行為の中止を裁判所に求めるもので、企業が違法な表示を行い続けることを防ぐための措置です。
差止請求が認められた場合、企業は法的な手続きを経て強制的に広告や表示を変更することが求められ、信用を失う結果につながる可能性があります。
3. EC運用における注意点
EC運用においては、表示方法やキャンペーン内容に注意しないと、知らないうちに景品表示法に違反してしまうことがあります。この章では、EC運用で日常的に起こりやすい問題についてまとめました。
・他社製品(サービス)との比較
ECサイトでは、自社製品と他社製品を比較する表を掲載することがあります。しかし、この比較表が誤解を招くような内容であれば、「優良誤認表示」に該当する可能性があります。
他社との比較表を作成する際には、事実に基づいた情報を用いることが基本です。具体的な数値データや根拠のある調査結果を明記し、第三者が見ても「公平である」と認められる内容にしましょう。
また、他社の欠点ばかりを強調せず、自社製品の強みを正確に伝えるバランスを心がけることが重要です。
・「世界一」「業界最高」などの誇張表現
「当社製品は世界一の品質を誇ります」「業界最高の効果を保証します」などの表現は、消費者に対して「他の製品と比較して、確実に優れている」と思われる表現です。使用する場合には、具体的なデータや信頼できる調査結果が必要です。
・ 「100%効果がある」「絶対に安心」などの表現
「100%」「絶対に」などの表現は、消費者にとってその製品が完璧であると印象づける表現です。 最も高い効果が期待できる製品であっても、個人差や使用条件により効果が異なるため、消費者に誤認を与える可能性があります。「多くの方からご好評をいただいています」など、柔らかい表現に言い換える必要があります。
・ 「今だけ」「数量限定」などの煽り表現
実際には期間が限定されていなくても、「今だけ」「数量限定」などと表現することは、消費者に「早く購入しなければいけない」という焦りを与える可能性があります。これらの表現を利用する場合は、販売期間や在庫の数量についても具体的な情報を記載することが必要です。
・二重価格表示
「二重表示価格」とは、商品の価格を比較して、消費者に「お得感」を感じさせるための表示方法のことです。
例えば、「通常価格10,000円がセール価格5,000円!」のようなものです。この場合、通常価格(10,000円)が、実際にその商品やサービスで一定期間販売されていた実績があることが必要です。
・打消し表示
キャンペーンやセールの告知で注意が必要なのが「打消し表示」です。これは、表示されたお得な情報に対して、その条件や例外を記載する表現のことを指します。
例えば、「今なら50%オフ!」というキャッチコピーを使用する場合、対象商品や期間の制限があるならば、明確に表示しなければなりません。打消し表示が不十分であると、消費者に誤解を与えることになり、不当表示とみなされる恐れがあります。
「当店の商品が今なら最大50%オフでお得に!対象商品:〇〇シリーズの一部商品。期間限定:2024年11月15日~11月20日。」などのように、対象商品や期間を明記する必要があります。
さらに、ページ下部やキャッチコピーのすぐそばに記載することで、消費者などが正しい情報を認識することができます。また、打消し表示は頻繁に変更される可能性があるため、定期的なチェックを行い、内容が古くなっていないか確認することも重要です。
・総付景品(そうづけけいひん)
EC運用でよく見られる「総付景品」とは、一定の条件を満たしたすべての購入者に提供される景品のことです。
例えば、「○○円以上の購入でもれなくプレゼント」といったキャンペーンが該当します。この場合、景品表示法では総付景品の上限は、取引の価額が1,000円以上の場合は、取引の価額の10分の2の金額まで、1,000円未満の場合は、200円までとなります。それを超える場合は法律違反となる可能性があります。
【違反事例】
キャンペーン内容:
「今だけ!3,000円以上のご購入で、ギフトプレゼント!」
商品ページの本文:
「当店の商品を3,000円以上お買い上げのお客様に、豪華ギフトをプレゼントします!」
この表示では、「豪華な無料ギフト」として高価なプレゼントを提供している印象を与えていますが、プレゼントできる金額の上限は600円までです。本キャンペーンが法律に抵触しないように、以下のように表現を修正する必要があります。
【適切な表示例】
キャンペーン内容:
「3,000円以上のご購入で、600円相当のプレゼントがもらえる!」
商品ページの本文:
「当店の商品を3,000円以上お買い上げのお客様に、600円相当のギフトをプレゼントします! ※在庫がなくなり次第終了」
このように、「無料ギフト」の内容は600円相当のものだと上限金額を明記することで、法律の範囲内でキャンペーンを実施することができます。
具体的に何が提供されるかを明確に説明することで、消費者に誤解を与えるリスクを減らすことができます。総付景品を提供する際は、必ず上限額を確認し、法律に基づいて適切に設定しましょう。
・無果汁の清涼飲料水等についての表示
商品ページで「〇〇フルーツ」などの果実名を使用する際には、果汁や果肉の含有量についての表示に注意が必要です。
清涼飲料水や乳飲料、アイスクリームなどにおいて、原材料に果汁・果肉が全く含まれていない、あるいは5%未満でその旨を理解されていない場合、景品表示法上で違反とされる可能性があります。 消費者が果汁が含まれていると誤認する表示は避けなければなりません。
果汁100%のジュースであっても、パッケージや広告に「果物の切り口」を使用することは、消費者にとって「果肉や果実の繊維がそのまま含まれている」ような印象を与え、優良誤認にあたる可能性があるため、「果実の切り口」の使用は避けましょう。
・減量効果を謳うサプリメント等についての表示
科学的な根拠や試験データがなく、「これを飲むだけで減量効果が期待できる」と謳うことも優良誤認表示となります。特定の食事制限や運動と併用しない限り効果がないサプリメントであれば、その旨を保証する必要があります。
これらの表示は消費者に誤った印象を与え、結果として法律違反となるため、EC運用者はとくに注意が必要です。具体例を理解し、日常の運用でこれらのリスクを回避することが重要です。
4. 2023年5月には景品表示法が改正、改正内容は?
2023年5月に景品表示法が改正され、2024年10月1日から施行されました。この改正は、消費者がより正確な情報を基に購入判断を行えるようにすることを目的としています。以下に、改正の主なポイントを解説します。
・打消し表示の明確化が義務化
これまで、打消し表示は注意喚起に留まっていましたが、改正により、表示内容をより明確に行うことが義務化されました。例えば、割引やキャンペーンの適用条件を具体的かつ分かりやすく表示し、消費者が誤解しないようにすることが求められています。とくに、打消し表示が小さすぎたり、目立たない形で表示されている場合は、違反のリスクが高まります。
・課徴金制度の強化
景品表示法に違反した場合に科される課徴金制度も見直され、違反が確認された場合のペナルティがさらに厳しくなりました。とくに、同じ違反行為を繰り返す企業には、以前よりも高額な課徴金が科される可能性があります。この改正は、企業に対して法律違反を未然に防ぐ努力を強く求めています。
・ECにおける情報提供の透明性向上
改正法は、ECサイト上で提供される商品やサービスの情報が、より透明性の高い形で消費者に伝わるよう求めています。価格表示やキャンペーン情報など、とくに誤解を招きやすい部分について、正確かつ明瞭な説明が必要です。これにより、EC運用者は情報管理の徹底が求められ、誤った表示によるリスクを減少させることが期待されています。
5. まとめ
EC運用において、景品表示法の遵守は企業の信頼を守るために欠かせない重要な要素です。この法律を軽視すると、措置命令や課徴金、差止請求など、企業にとって大きなダメージを引き起こす可能性があります。とくに、価格表示やキャンペーン、景品の提供に関しては、ユーザーに誤解を与えないように注意を払いましょう。
2023年5月の法改正により、打消し表示の明確化や課徴金制度の強化が進んでおり、EC運用者に求められる責任はますます高まっています。法律を正しく理解し、リスクを回避しながら健全なサイト運用を行うことが、顧客との信頼関係を築き、ビジネスの成功につながるでしょう。今後も最新の法律やガイドラインを意識しながら、コンプライアンスを強化していくことが重要です。
しかし、法律に関する管理は複雑なため、日々の業務と両立するのは容易なことではありません。法令を遵守しながら、効果的な運用を行いたい企業にとっては、プロのサポートが非常に有効です。
弊社のEC運用代行サービスでは、最新の法改正にも対応し、コンプライアンスを確保しながら安心して運用を任せていただけます。ぜひお気軽にご相談ください。
Written by bay_yamada