・楽天市場の広告予算はどのくらい必要か?
・費用対効果をシミュレーションしてまとめてほしい。
この記事では、楽天市場における広告予算の決め方を、わかりやすく、かつ論理的に解説します。
適切な予算を設定し、効果的な広告運用を目指しましょう!
1.広告予算を決める前に知っておきたい楽天市場の売上方程式
楽天市場での効果的な広告運用を理解するためには、まず売上の仕組みを知ることが重要です。本セクションでは、「売上方程式」を使って売上の構成要素を解説します。
売上方程式
売上 = アクセス人数 × 転換率 × 客単価 × リピート率
アクセス人数:商品ページを訪れたユーザー数
転換率:CVR(コンバージョンレート)と呼ばれ、アクセスしたユーザーがどれくらい購入に至ったか示す割合
客単価:一回の購入でユーザーが支払う金額
リピート率:一度購入したユーザーが再度購入する割合
この方程式の中で「アクセス人数」を増やすために実施するのが「広告」です。
売上方程式を理解して適切な広告予算を設定するため、具体的な事例やデータをもとに、次のセクションでは実際に楽天市場での広告予算の算出方法を解説していきます。
2.楽天市場での広告予算の決め方
広告予算を設定する際の判断軸は、売上目標から決める方法とLTV(顧客生涯価値)を考えた2つがあります。それぞれの方法での計算方法を以下に解説します。
2-1. 売上目標から逆算する方法
昨年の売上、もしくは直近3ヶ月のデータから転換率と客単価を用意します。そして、売上方程式に当てはめれば、必要なアクセス人数が算出できます。
例)売上目標100万円で転換率が2%、客単価が5,000円、リピート無しの場合
売上目標(月) | 100万円 | |
目標アクセス人数 | 10,000 | 売上目標÷転換率÷客単価 |
転換率 | 2% | 月次平均値 |
客単価 | 5,000円 | 月次平均値 |
リピート率 | 100% | 新規のみの場合100% |
必要なアクセス人数は、「10,000」とわかりましたので、ここから毎月の自然検索数を差し引くと、広告からの流入数がわかります。そして、広告のCPCを過去実績から当てはめることで広告費用が算出できます。
例)毎月の自然検索数が平均4,000、CPCが21円の場合
自然検索数 | 4,000 | 月次平均値 |
必要アクセス人数 | 6,000 | 目標アクセス人数ー自然検索数 |
CPC(クリック単価) | 21円 | 想定値(過去実績値より) |
広告費用 | 126,000円 | 必要アクセス人数×CPC |
2-2. LTVから逆算する方法
こちらは、顧客のリピート率や平均購入回数を考慮して、広告予算を算出する方法です。
まず、LTV(顧客生涯価値)とは、ひとりの顧客が一生のうちにその企業やブランドに対してもたらす収益の合計を表します。LTVが高い顧客ほど企業にとって価値があるため、企業はその顧客との関係を長く続けるための施策に力を入れることで、売上を安定させることができます。
そのため、毎月のリピート回数から、一人あたりのLTVが算出できます。
例)ヘアケア商品を販売する店舗のA商品の場合 ※一人あたり
A商品の利益 | 2,000円 | |
リピート回数 | 6回/年 | |
LTV(顧客生涯価値) | 12,000円 | 利益×リピート回数 |
広告で新規顧客を獲得する費用はLTV以下でないと利益がでないため、今回は3割を広告費用とします。そして、新規購入数の月次平均値と掛け合わせることで、店舗としてA商品にかける月間の広告費用がわかります。
LTV(顧客生涯価値) | 1,2000円 | 利益×リピート回数 |
新規購入数 | 50人 | 月次平均値 |
CPA(顧客獲得単価) | 4,000円 | LTVの3割 |
広告費用 | 20万円 | 新規購入数×CPA |
3.広告予算を楽天市場の広告種類ごとに配分する
3-1. 各広告の予算配分
楽天市場での広告運用では、各広告メニューの特性に応じて予算を適切に配分することが重要です。各広告の特性や費用体系、メリットを理解した上で、各数値をコントロールしながら、広告メニューごとにシミュレーションを作成し、効果的に予算を配分します。
CPCをもとにした予算配分の優先順位も確認ください。
1. RPP(検索連動型広告)
- 広告概要: ユーザーの検索キーワードに応じて商品が表示される
- 費用体系: クリック課金型(CPC)。最低クリック単価は10円から設定可能
- メリット: 検索結果の上位に表示され、購入意欲の高いユーザーにリーチしやすい
押さえるべき優先順位: 1位
理由
・他広告よりCPCが安いため、同じ広告費用で獲得できるアクセス人数が一番高い
・楽天市場は、7割以上のユーザーが検索経由で購買に至るため
2. TDA(ターゲティングディスプレイ広告)
- 広告概要: 楽天市場内のデータを活用し、高精度なターゲティングが可能なバナー広告
- 費用体系: インプレッション課金型(CPM)。1インプレッションあたり0.75円から設定可能
- メリット: 高い視認性と広範囲へのリーチやセグメント配信も可能
押さえるべき優先順位: 2位
理由:
・RPPでは獲得できなかった、新規顧客の獲得が可能
・商品リニューアルや店舗限定のキャンペーンの際は、既存顧客にリーチできる
・RPPよりCPCが高く、バナー作成の工数も掛かるため広告費用に余剰があれば実施をおすすめ
3. クーポンアドバンス広告(運用型クーポン広告)
- 広告概要: 潜在ユーザーへクーポンを表示する広告
- 費用体系: クーポン獲得費用とクーポン割引費用の2種類。クリック単価は25円から設定可能。
- メリット: 検索画面上部や楽天のトップページに表示されるため、購入意思が高いユーザーへリーチ
押さえるべき優先順位: 3位
理由:
・クーポンをユーザーが獲得したときに課金されるため、ROASは他広告より良い。
・RPPのCPCが高騰して検索広告の枠を抑えられていない場合、効果的である。
・大体のCPCは、RPP以上・TDA以下となるが、CPCとクーポン値引き額が費用となるため粗利率が悪化する可能性がある
4. CPA(効果保証型広告)
- 広告概要: ROAS 500%が確定した成果報酬型広告
- 費用体系: 売上の20%が広告費用として発生
- メリット: ROAS 500%で換算した際に費用対効果が見込める商材は実施を推奨
- デメリット:広告費用のコントロールができないため、予算がきっちり決まっている場合は要検討
押さえるべき優先順位: 4位
理由:
・広告予算設定機能がないため、本記事の予算をもとに分配するケースではミスマッチ
・複数商品の併せ買いをした場合は、除外にしている商品でなければ成果報酬の対象となる
・クリックしてから720時間が課金対象期間のため、期間内にリピート購入があった場合は同一ユーザーの2回目購入分も広告費用の対象となる
配分のまとめ表
広告メニュー | 優先度 | 補足 |
RPP | 1位 | ・楽天市場で購入するユーザーの約7割が検索からのため最重要 ・CPCは10~40円の範囲で、高騰している場合は避ける |
TDA | 2位 | ・RPPの消化で予算が余る場合は実施 |
クーポンアドバンス | 3位 | ・RPPとクーポン発行している場合で、RPPのCPCが高騰している場合に実施 |
CPA | 4位 | ・ROAS 500%で費用対効果が見込める場合は実施 ・予算設定ができないため、頻繁に実績確認が必要 |
3-2. RPPの注意点:ROASだけに頼らない施策
広告予算と配分について解説してきましたが、費用対効果を一旦置いておいて、販売実績を積み上げ、検索順位の上位表示を狙う戦略もあります。
ROASだけを重視していては、売上アップの可能性を最大限に引き出せないからです。
特に、RPP(検索連動型広告)で集客を行う場合、以下の対応が重要です。
- メイン画像の改修: 視覚的に魅力的な画像を用意することで、クリック率や購買意欲が向上します。
- キーワードや競合を加味したコンテンツ改修: 効果的なキーワード戦略や競合分析を行い、コンテンツを最適化します。
広告を活用して集客する際は、自然検索だけの集客と比べて、そこまで商品への興味が薄いユーザーが増えるため、通常は転換率が低下します。したがって、広告運用だけでなく、商品ページや検索対策など、総合的な強化が必要となります。
まとめ:広告運用だけでは成功しない。全体戦略の重要性
ここまでの内容をまとめると、自然検索では取り切れないユーザーの獲得には広告費用を確保してアクセス人数UPさせることが、売上拡大には重要です。
しかし、広告運用はアクセス人数UPだけの施策です。楽天市場の店舗運用にはアクセス人数以外にも転換率や客単価を上げる施策も必要となります。そして、転換率UPの施策(LP改善など)は広告運用方針と連動する必要があります。
当社では、売上方程式に基づいて、アクセス人数・転換率・客単価・リピート率を一貫してサポートしておりますので、もし広告運用だけ実施しているがその他の施策を連動して実施できておらず、売上UPに課題を持っていましたら、私たちの運用代行サービスをぜひご利用ください。
弊社ではEC事業を成功へと導くための最適な施策を提案し、効果的に運用を進めています。
Written by Tajima