ECサイトを運営していると、「売上が思うように伸びない」と悩むことがあるかもしれません。売上が伸び悩む理由はさまざまですが、販売手法を見直すことで改善できるケースも多いです。
そこで注目したいのが、「クロスセル」と「アップセル」です。これらは、客単価の引き上げに役立つ手法として、多くのECサイトで活用されています。効果的に実施することで、売上拡大だけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。
クロスセルとアップセルの違いや目的、成功させるための具体的な方法を成功事例とともにご紹介します。売上やLTV(顧客生涯価値)の向上を目指すECサイト運営者の方にとって、有益な情報となるはずです。ぜひ参考にしてください。
1.クロスセルとアップセルの目的
ECサイトの売上を向上するためには、単なる新規顧客の獲得だけではなく、既存顧客の価値を最大化することが重要です。そこで役立つのが「クロスセル」と「アップセル」です。これらの手法を適切に活用することで、売上の向上だけでなく、コスト削減や長期的な顧客関係の強化が可能になります。
クロスセルとアップセルの主な4つの目的について見ていきましょう。
売上とコストの効率化
クロスセルとアップセルを行う主な目的は、コストを抑えながら効率的に売上を向上させることです。
売上を伸ばす方法として一般的なのは「新規顧客の獲得」ですが、新規顧客を獲得するためには、次のようなプロセスが必要です。
- 見込み顧客の獲得
- 商品の魅力をアピール
- 初回購入への誘導
新規顧客獲得には時間とコストがかかる上に、競争の激化により、新規開拓が難しくなります。一方で、クロスセルやアップセルは、すでに自社の商品やサービスに好感を抱いている顧客を対象にするため、効率的に売上を向上できます。
つまり、接点のない顧客にアプローチするより、既存顧客により高価な商品や関連商品を提案したほうが、広告費などのマーケティングコストを削減しながら、売上アップを実現できるのです。
売上方程式と客単価をアップする
ECサイトの売上向上には、売上方程式に基づく戦略が不可欠です。
売上方程式:
売上 = アクセス人数 × 転換率 × 客単価 × リピート率
この4つの要素の中でも、「客単価」の向上は、売上アップに特に重要な指標です。
客単価とは?
客単価とは、1回の購買によって顧客1人当たりが支払う総額のことを指し、以下の式で算出できます。
ECサイトにおいては、一定の期間での「平均客単価」を指標とし、これを引き上げることで売上増加が可能です。
(例)月間2,000PV・転換率10%・客単価が1,000円のECサイト
2,000 × 10% × 1,000 = 200,000円
↓
客単価2,000円への引き上げに成功した場合、
2,000 × 10% × 2,000 = 400,000円
このように、客単価を向上させることで、アクセス数や転換率を変えずに売上を大幅にアップさせることができます。
クロスセルとアップセルを活用することで、顧客1人あたりの購入額を増やし、より少ない集客コストで売上拡大を図ることが可能です。
LTV(顧客生涯価値)をアップする
クロスセルやアップセルは、一時的な売上増加にとどまらず、長期的な顧客関係の構築にも大きく寄与します。適切な商品提案を行うことで、顧客満足度が向上し、リピート購入の促進につながります。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、次の式で算出されます。
クロスセルやアップセルを導入し、客単価や購入頻度を増やすことで、企業の長期的な利益の最大化が可能です。
顧客満足度をアップする
クロスセルやアップセルは、単なる売上アップの手法ではなく、顧客のニーズに応じた最適な提案を行うための施策でもあります。
「この商品を購入した方にはこちらもおすすめ」と提案することで、顧客の利便性が向上し、満足度の高い購買体験を提供できます。
顧客満足度が向上すれば、ブランドロイヤルティの強化やリピート購入の促進につながり、結果的にLTVの向上にも貢献します。
2.クロスセルとアップセルの違い
クロスセルとアップセルは、どちらもECサイトの売上向上に役立つ手法ですが、それぞれ異なるアプローチを取ります。ここでは、それぞれの違いについて解説し、実店舗とECサイトにおける具体例を紹介します。
2.1 クロスセル
クロスセルとは
一つの商品を購入した顧客に対して、関連する商品を合わせて販売することを「クロスセル」といいます。
実店舗の例
マクドナルドなどでハンバーガーを購入する際に、「ご一緒にポテトはいかがですか?」と言われたことはないでしょうか?実はこれもクロスセルの手法の一つです。
またコンビニやスーパーのレジの横に、安価のお菓子や飲料などが置いてあることも多いですが、これについても同様です。「どうせ一緒に食べるなら」と、つい手を出してしまう顧客の心理を上手くついています。
関連商品をセット購入することで○%値引きされる、もう一つ商品がついてくる、というのもクロスセルの手法です。
ECでの例
実店舗でできることをECサイトにおいても活用することができます。
とくに楽天市場やAmazonのような「モール型ECサイト」においては、自動でレコメンド機能がついており、関連商品を表示させることができます。
モール型ECサイトでは、例えば包丁を購入するときにはまな板がおすすめされたり、スマートフォンのケースを購入するときにはフィルムがおすすめされたり、自動的にレコメンドされることが多いです。
商品をセットで購入することで、お客様の生活がいかに豊かになるかという観点で関連商品を打ち出すことがポイントとなります。
クロスセルの最適な表示位置
クロスセルは、顧客が商品・サービスを購入するタイミングや、定期的なタイミングで提案するのが効果的です。顧客が購入を検討している時点で、相性の良い商品やニーズを満たす関連商品を提示することで、顧客満足度の向上と客単価アップが期待できます。
適切なクロスセルの提案タイミングとして、以下の4つのシチュエーションが挙げられます。
- 商品ページ閲覧時
- 顧客が商品詳細ページを見ている際に、「この商品を買った人はこんな商品も購入しています」といったレコメンドを表示することで、購入意欲を喚起します。
- 例:ノートパソコンのページで、保護ケースやマウスを提案
- カート追加時
- 商品をカートに入れた瞬間に、補完商品や関連商品を表示することで、ついで買いを促進します。
- 例:「あと〇〇円で送料無料」と表示し、追加購入を促す
- 決済前のチェックアウト時
- 決済画面に進んだ際に、「一緒に購入されることが多い商品」を提示することで、最後のクロスセルのチャンスを最大限に活用します。
- 例:スマートフォン購入時に、保証プランやアクセサリーを推奨
- 購入後のフォローアップタイミング(メール・SNS等)
- 購入後、一定期間が経過したタイミングで、補完商品や消耗品の提案を行うことで、リピート購入を促進します。
- 例:プリンター購入後に、インクや用紙の案内を送る
2.2 アップセル
アップセルとは
現在ある商品よりグレードの高い商品を販売することや、上位モデルに乗り換えてもらうことを「アップセル」といいます。
実店舗の例
飲食店で定価のドリンクを注文したときに、「プラス50円で2倍のLサイズに変更できますが、いかがでしょうか?」というセールストークがまさにアップセルです。
予算より高くても、「50円で2倍になる」という格安感につられ、予算より高いものを買ってくれるお客様が増えるのです。
ほかにも季節や期間を限定した場合(例えば結婚や出産などの特別なギフト)にも、グレードの高い商品が提案しやすいでしょう。
「大切な人に贈りたいからちょっとグレードの高いものを」と、予算より高額な買い物をしてしまうのと同じ原理です。
ECでの例
実店舗と同様に、ECサイトでもアップセルの手法を活用することができます。特に、楽天市場やAmazonなどの「モール型ECサイト」では、より高性能な商品や上位モデルを自動的にレコメンドする機能が搭載されており、購入を促進できます。
例えば、基本モデルのノートパソコンを購入しようとすると、より高スペックのモデルが「人気商品」として表示されたり、カメラを購入する際に、プロ仕様の上位機種が「こちらもおすすめ」として提案されたりします。
ECサイトにおけるアップセルのポイントは、商品のアップグレードによって顧客にどのようなメリットがあるかを明確に伝えることです。たとえば、「より長持ちする」「機能が充実している」などの価値を強調することで、購買意欲を引き出せます。
アップセルの最適な表示位置
アップセルの効果を最大化するためには、顧客の購入意欲が高まる適切なタイミングで提案することが重要です。適切なタイミングを見極めることで、単なる価格の押し上げではなく、顧客のニーズに寄り添った提案が可能になります。
具体的なアップセルの提案タイミングは以下の通りです。
- 商品ページ閲覧時
- 顧客が商品詳細を閲覧しているタイミングで、「より高性能なモデルはこちら」といった比較表や、おすすめのアップグレード商品を提示する。
- 例:スマートフォンの商品ページで、ストレージ容量の多い上位モデルを紹介
- カート追加時
- 顧客が商品をカートに追加した際に、「上位モデルへのアップグレードがお得」といったポップアップを表示し、購入検討を促進します。
- 例:「今なら20%オフでプロモデルにアップグレード可能!」と表示
- 決済前のチェックアウト時
- 購入手続きの段階で、「上位モデルのほうがコストパフォーマンスが高い」といった訴求を行い、ワンランク上の購入を後押しする。
- 例:「より快適な使用感を得るなら、上位モデルがオススメです!」と提案
- 購入後のフォローアップタイミング(メール・SNS等)
- 商品購入後に、「より快適に使うためのアップグレード商品」をメールやSNS広告で案内し、将来的なアップセルを狙う。
- 例:「お使いのモデルをさらに快適にするアップグレード商品をご紹介!」とアプローチ
3.成功のポイント
クロスセルやアップセルを効果的に活用するためには、単に商品を提案するだけでなく、顧客のニーズや行動を的確に把握し、適切なタイミングで最適な提案を行うことが重要です。ここでは、成功に導くための2つの重要なポイントを解説します。
顧客のニーズに合わせたアプローチを行う
クロスセルやアップセルの成功には、顧客の興味やニーズに合った商品提案が欠かせません。例えば、商品購入履歴や閲覧履歴を活用し、顧客が求めている商品と関連性の高いものを提供することで、より自然な形での売上向上が可能です。
効果的なアプローチ手法
- パーソナライズされた提案:AIを活用し、顧客ごとの購入傾向に基づいた商品を提案する。
- 購買フェーズに合わせたアプローチ:初回購入時とリピート購入時では異なる提案を行う。
- バンドル販売の活用:複数商品をセットで提案し、単品購入よりもお得感を演出する。
例えば、ファッションECサイトでは、Tシャツを購入した顧客に対して、関連するボトムスやアクセサリーを提案することで、クロスセルの成功率を高めることができます。
顧客に関するデータを分析する
クロスセル・アップセルの成功には、顧客データの分析を通じた的確なマーケティング戦略が不可欠です。以下のデータを活用することで、顧客行動の理解を深め、最適な商品提案が可能になります。
活用すべき顧客データ
- 購入履歴データ:過去に購入した商品や金額から、クロスセルやアップセルの最適な提案を行う。
- 閲覧履歴データ:興味を持った商品を把握し、次回訪問時に関連商品を提示する。
- カート放棄データ:カートに入れたまま購入しなかった商品の要因を分析し、適切なフォローを実施する。
データを活用したセグメント別の提案は、売上向上だけでなく、顧客満足度の向上にも大きく寄与することが示されています。
データ分析に基づく施策の例
- 過去の購入データをもとに、一定期間後にリピート購入を促すメール配信を行う。
- 顧客の購買行動に基づき、SNS広告やリターゲティング広告を最適化する。
- ECサイト内の「おすすめ商品」セクションに、データに基づく商品を表示する。
4.まとめ
クロスセルとアップセルは、ECサイトの売上拡大や顧客満足度の向上において重要な役割を果たします。適切な手法を導入することで、客単価の増加、LTV(顧客生涯価値)の向上、コスト削減といった多くのメリットを得ることができます。
成功のポイントとして、以下の点が重要です。
- 顧客のニーズに合わせた適切な提案
- パーソナライズされた商品提案
- 顧客の購買フェーズに応じたアプローチ
- バンドル販売によるお得感の演出
- データ分析による最適化
- 購入履歴・閲覧履歴の活用
- カート放棄データの分析とフォローアップ
- リターゲティング広告の最適化
これらの手法を適切に組み合わせることで、ECサイトの売上向上だけでなく、顧客ロイヤルティの強化やリピート購入の促進にもつながります。
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Written by
Tajima
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